さつきは東京のど真ん中での日常に閉じ込められていた。会社の仕事、友達との飲み会、それが彼女の日常だった。それ自体が悪いことではないが、ある日突然、彼女の中の声が叫び始めた。「私は本当にこの日常に満足しているのだろうか？」

それはある日のことだった。さつきは家の押し入れを整理していた。すると、古いアルバムが手元に落ちてきた。彼女が幼い頃に家族で行ったキャンプの写真だった。爽やかな風に吹かれて笑顔で遊ぶ自分、焚き火を囲んで家族と過ごす暖かな時間。その写真を見た瞬間、彼女の中に今まで忘れていた感情が溢れ出してきた。

「こんな自分を忘れていたなんて…」

さつきは深く考え込んだ。彼女が日常の中で感じていた違和感の原因が少しずつ明らかになってきた。それは自分の本当の気持ちを見失ってしまっていたからだ。

さつきは意を決して、数日後に有給休暇を取ることを決意。そして、自分探しの一歩として、ソロキャンプに出かけることにした。彼女はまず、キャンプ用品店に足を運んだ。新しいテント、ランタン、焚き火セット。店員のアドバイスを受けながら、最適な道具を選び取った。準備が整った彼女は、選んだキャンプ地、「星湖の森」へと向かうことに。

列車を乗り継ぎ、都会の喧騒から遠く離れた場所に到着した彼女は、すでに心の中が晴れやかになっていた。バス停から少し歩いた先に、昔の写真に映っていた湖が広がっていた。風が水面を撫でる音、木々がざわめく音。すべてが新鮮で、彼女の心を落ち着かせてくれた。

「こんな場所で、自分の心と向き合ってみよう。」

テントを設営するさつき。初めての一人キャンプだが、彼女の中には不安よりも期待の方が大きかった。夜が近づくにつれ、焚き火を囲んで過ごす時間が待ち遠しかった。

日が暮れ、焚き火を始める彼女。火のゆらぎと、星空の下での静寂。さつきは深い呼吸をしながら、都会の日常からの一時的な解放を実感していた。

「こんな自分を取り戻したかったんだ。」

彼女の目からは涙がこぼれた。しかし、それは悲しむ涙ではなく、新たな自分を見つけた喜びの涙だった。
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